​保育園・幼稚園での事故と安全管理|橋本あれふ法律事務所

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保育園・幼稚園での事故と安全管理

保育園・幼稚園に求められる安全管理システム

 内閣府の集計によると,平成30年に教育・保育施設等で発生した死亡事故や治療に要する期間が30日以上の負傷等の報告件数は,1641件(うち死亡事故9件)でした。

 保育園・幼稚園では,のびやかな教育保育が施されることが期待される半面,保護者にとって,保育教育環境が安全であるかどうかは大きな関心ごとです。

 園で事故が起こり,子どもの安全管理について施設に過失が認められた場合には,法的にも刑事上・民事上の責任を追及される可能性があります。

 保育園・幼稚園には,保護者や地域が安心して子供を預けられるような安全管理システムが構築されていることが求められています。

平成30年度に起きた保育所等での事故件数
 保育所等放課後児童クラブ合計
負傷者等12124201632
 (うち意識不明)(11)(2)(13)
 (うち骨折)(974)(356)(1330)
 (うち火傷)(4)(2)(13)
 (その他)(223)(60)(283)
死亡909
保育園・幼稚園での事故

保育園関係者の法的責任

 ひとたび園で重大事故が生じてしまうと,マスコミ報道といった社会的制裁を受けるだけでなく,裁判における刑事上・民事上の責任を追及される事態にもなり得ます。

 事故後の裁判で初めて法的に対処するのではなく,未然に事故防止策を取っておくことが大切です。
 下記のような裁判例が蓄積されています。

保育園・幼稚園事故と裁判
 刑事事件民事事件
判例横浜地裁平成27年3月31日横浜地裁平成29年4月13日那覇地裁平成25年4月30日
事案幼稚園でのプール活動中に3歳児が溺死した事案につき,担当保育士と施設庁が起訴された。左記事案の民事訴訟。認可外保育施設で,生後6か月の乳児が午睡中に窒息死した事案。
内容担当保育士は過失が認められて有罪。施設庁は過失が否定されて無罪。法人,施設長,担当保育士に合計6300万円の請求認容。保育従事者の注意義務違反が認められ,園長と保育従事者に合計1500万円の請求認容。

食事中の事故

 厚生労働省による人口動態統計によると,平成22年から平成26年までの5年間で,6歳以下の子供の食品による窒息死事故は87件報告されています。

「かしの木保育園」での誤嚥事故

 食事中の事故防止のためには,3つの局面(食前・食中・事故後)での注意義務が求められているといわれています。

  1. 食事の与え方

     豆・ナッツ類等の硬くて丸い食品は,ツルっと滑りやすいため気道に入りやすく,軌道に入ったときに重篤な症状を来すおそれがあります。上記「かしの木保育園」での事案では,ラムネとカステラという口内の水分を吸収しやすい食材の組み合わせであったこと,お昼寝後は十分な水分補給をすべきであったことが指摘されています。

  2. 食事中の監視

     「かしの木保育園」での事故のように,子どもは,口内に食品を詰め込んだり,食事中に動き回ったりすることがあります。それを制止するため,また窒息症状が起きたときに直ちに応急処置ができるように,子ども一人一人に目が行き届く体制を作っておくことが求められます。

  3. 事故が発生した時の対応

     保育士全員が,のどに詰まったものを吐き出させる正しい処置,及び蘇生処置を理解しておくことが求められます。

  4. 安全管理体制の構築

     事故が生じないように,また万一事故が生じた場合にも民事・刑事上の責任を問われないように,常日頃から次のような安全管理体制を整えておくことが重要です。

    1. 「ヒヤリハット」事例の収集分析

       一つの重大事故が発生するまでに,300の「ヒヤリ」「ハッと」事例が見過ごされているといわれています。園全体で,ヒヤリハット事例を共有しておきましょう。

    2. 過去の事故事例の検討

       2018年以降の全国の保育所での事故情報は,内閣府HP「教育・保育に関する報告・データベース」に公開されています。

    3. 保護者への説明

       それぞれの子ども特有の危険なクセがあります。その子のことをよく知る保護者ともヒヤリハット事例を共有して,保護者と二人三脚で危険因子を取り除くことも大切です。

    保育園の安全