​面会交流について|橋本あれふ法律事務所

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面会交流について

 面会交流とは,離婚後・別居中に,非監護親が子どもに会って交流することをいいますが,監護親がこれを拒否することもしばしば生じます。

 ここでは,双方にとって気持ち良く,滞りなく面会交流を行う方法についてご説明します。 そのためには,夫婦双方が,面会交流についての正しい知識を共有することが大切です。

面会交流の実現

面会交流を拒否できる場合,できない場合

原則として拒否できない

 親が,子どもと交流したいと願うことは自然な希望です。
 子にとっても,母親と父親の双方と交流し,両親から愛情を受けながら育つことは必要なことです。

 このように,面会交流は子の福祉に適うものですから,原則として認められるべきであるというのが現在の日本社会で通説的な考え方です。裁判所や調停委員も同様の考えに立っており,調停・審判となった場合でも,原則的に面会交流は認められます。

例外的に拒否できる場合

 これに対して,次のような場合には面会交流を拒否することができます。

  • 非監護親からの暴力・DV行為があったとき

  • 非監護親が子どもを連れ去るおそれがあるとき

  • 面会交流することにより,子どもが非行に走るおそれがあるとき

 このような場合は,面会交流をすることによりかえって子どもの福祉に悪影響を与えてしまいますから,面会交流を拒否することができるのです。

養育費との関係

 養育費が支払われていないからといって,面会交流を拒否することができるでしょうか?

 結論的には,養育費の支払いと面会交流の拒否は関係がありません。 「養育費の支払いを条件として,面会交流を認める」とか「面会交流を拒否されるから,養育費は支払わない」という主張は失当です。

 いさかいのある夫婦間の心情としては,十分理解できます。

 しかし,非監護親(多くの場合は父親)は子どもに対する扶助義務として養育費を支払わねばならないし,監護親(多くの場合は母親)は子どもの福祉のために面会交流に協力しなければならないという義務を負っているのです。

子どもの意向

 子どもが自己の意思をしっかりと表明できる程度に成長しているのであれば,面会交流の可否判断において子どもの意向が反映されます。

 逆に言えば,子どもの年齢が低いときには,子どもが会いたがっていないというだけで面会交流を拒否できるわけではないということです。

 いずれにせよ,子どもが面会交流に消極的な場合には,子どもが会いたがる環境・方法で面会交流を実施するよう夫婦双方が協力していくことが求められるといえるでしょう。

面会交流を求める手続きの流れ

 父母の協議が調わない場合,又は協議をすることができない場合には,調停の申立てをするのが一般的です。面会交流の手続きを求める場合,裁判所では次のような流れで面会交流の可否が判断されます。

  1. 調停の申立て

  2. 調停

  3. 審判

  4. 面会交流を「認める」又は「認めない」という決定

※ 試行的面会交流
 家庭裁判所の調停や審判においては,どのような形態の面会交流が子の福祉(子の利益)に適合するかのを家庭裁判所調査官が検討するため,子と非監護親との関係を調査するために,裁判所において,試行的面会がなされることがあります。
 裁判所の児童室(プレイルーム)で非監護親と子との面会交流を試行し,交流の様子を調査官が観察したうえで,監護親がその結果を冷静に受け止められるよう助言を行うことが考えられます。
 また,非監護親と子との交流が長期途絶えている場合に,裁判所内での試行面会交流を行うことによって円滑な面会交流の導入を図ったり,子の心情や意向を踏まえて試行を実施するなどの調整的な関与が考えられます。

面会交流の実務

事例1 子の意思が問題となるケース

 父母の性格の不一致などが原因で,母が子3人を連れて実家に戻り,別居生活を送るようになりました。まだ離婚は成立していません。父は子らと面会交流をしたいと考えていますが,母は子らが父と会うのを嫌がっていると言って応じません。

Question
 監護親である母は,子らが非監護親である父と会うのを嫌がっていることを理由に,父からの面会交流の申し入れを拒むことができるのでしょうか。

Answer
 非監護親と子との面会交流は,子の福祉を図るために行われるものですから,子自身が面会を嫌がっている場合にまで,無理に面会交流を実施する必要はありません。
 ただ,子が,内心では面会を望んでいるのに,表面的にだけ面会を嫌がっている場合もあります。子自身が嫌がっているからといって面会を拒否することは,逆に子の福祉に反することになってしまいます。
 そこで監護親としては,子が面会を拒否する理由がどこにあるかを見極め,面会が子にとって必要で重要なものであることを理解し,面会の実現に努力する必要があるでしょう。
 そのうえで,子が面会を嫌がっているのかどうかを判断し,嫌がっている場合には拒否することになると思われます。

事例2 養育費不払いが問題となるケース

 父母の性格の不一致などが原因で,母が子を連れて別居を開始しました。
 母は,結婚生活を維持することは難しいと考え,離婚調停を申し立てました。母は,親権と養育費の支払いを求めましたが,父は,子には会いたいが収入が少なく養育費を支払うことができないということで,調停は不成立となりました。
 その後,審判に移行し,父が養育費を月2万円支払う,月1回の面会交流を実施するとの審判がなされましたが,父は1回目の支払い期日から養育費を支払ってません。

Question
 監護親である母は,非監護親である父が養育費を支払わないことを理由に面会交流を拒むことができますか。

Answer
 養育費を支払わない非監護親に対し,養育費も支払わない親になぜ子を会わせなければならないのか,と感じる監護親は少なくありません。
 しかし,面会交流については,子の福祉を最優先に考えなければならないということを看過してはなりません。養育費の支払いと面会交流は性質の異なる問題であり,養育費支払いの有無は,支払義務者の面会交流の可否と直接結びつくものではありません。
 子の立場に立って面会交流を考えるということを忘れてはいけませんし,面会交流が離婚条件の駆け引きの材料にされるということがあってはなりません。養育費の支払いを求める手立ては別途講じるとして,まずは子の立場に立って面会交流を実施するということを心がけるべきでしょう。

事例3 面会の実現に困難な事情があるケース

 父と母は,父の暴力が原因で裁判離婚をしました。婚姻期間中,父の暴力で母が複数回骨折を伴う大怪我をしました。
 また,子も一度父に突き飛ばされ骨折したことがあります。母は,父に対する恐怖心が強く,離婚をした現在も,父に住所を知られることを拒否しています。 
 このような中,父が子との面会交流を求めて調停を申し立てました。

Question
 非監護親である父としては,子に対して暴力を振るってしまったことは心から反省し,二度と子に暴力を振るうつもりはないのですが,監護親である母は「子どもが会いたがらない」と言って,会わせてくれません。このような場合,面会交流は認められるのでしょうか。

Answer
 面会交流が認められるかどうかは,子の福祉を優先に判断されるものですから,面会が子のためにならないと判断されれば,面会は認められないでしょう。
 父の暴力が原因で,子が父に恐怖心や嫌悪間情を抱き,子が本心から父との面会交流を拒絶しているのであれば,たとえ面会交流の調停・審判を求めても,面会交流の実施は難しいでしょう。

履行の実効性確保

 面会交流の合意ができたとしても,「将来にわたってきちんと面会交流きるのか?」「口先だけの約束ではないか?」と心配になるかもしれません。

 非監護親としては,面会交流を実施することについて合意が成立したとしても,それがとどこおりなく実施されるのかどうかが不安に感じるはずです。

 面会交流について合意するときは,将来にわたって面会交流が滞りなく実施されるように,以下のような手続きを踏んでおくことが大切です。

調停調書に残す

 面会交流は,互いに合意が成立すればそれだけで権利義務関係が生じます。
 けれども,履行の実効性を確保するという観点からすると,それを調停調書という形で残しておくか否かで,大きな差が生じます。
 面倒であっても,家庭裁判所に面会交流の調停を申立て,調停調書の形式で合意しておくことが重要です。

  1. 履行勧告

     まず,監護親が面会交流に協力しないときは,調停裁判所に申立てることで,裁判所から相手方に対して履行の勧告をしてもらうことができます。
     これは書面で申し立てる必要もなく,手数料もかからないため,簡易な手続で相手方に履行を促す効果があります。

  2. 間接強制

     それでも相手方が面会交流を拒否する場合には,調停調書に基づき強制執行を申し立てることができます。 面会交流の強制執行は,子の行動を伴う以上直接的に強制することはできず,間接強制の方法によることになります。

    ※ 間接強制 とは,「相手方が面会交流に協力しなかったときは,金○○万円支払わなければならない。」との義務を課すことにより,相手方に履行を間接的に強制するという,強制執行の一形態です。

履行の日時・場所・方法を特定しておく

 間接強制が認められるためには,面会交流の日時・場所・方法を特定しなければなりません。 「毎月第1土曜日の午前11時に,○○駅前改札で引渡す」など,具体的な履行の手段を特定しておくことが必要です。

おわりに

 以上のように,面会交流を拒否しない・させないためには,面会交流について夫婦双方が正しい知識を共有することが大切です。

 また,上記のように履行の実効性を確保するための手続をとることも大切です。

 しかし,結局のところ,面会交流が気持ち良く履行されるかどうかは,夫婦双方の信頼関係が基礎になってきます。監護親が面会交流に協力することももちろんですが,非監護親も面会交流の時間をきちんと守り,監護親に協力について感謝の気持ちを伝えるなどして信頼関係を気付いていくことが何より重要でしょう。