成年後見制度における財産管理の実際|橋本あれふ法律事務所

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成年後見制度における財産管理の実際:不正防止と透明性の確保

成年後見制度を利用する上で、最も重要な関心事の一つが、本人の財産がどのように管理され、その透明性がどのように確保されるかという点でしょう。この制度は、判断能力が不十分な方を保護するためのものですが、同時に財産の不正流用や不適切な管理を防ぐための厳格な仕組みが設けられています。

1. 成年後見人による財産管理の基本

成年後見人(保佐人、補助人も含む)に選任されると、本人の財産を適切に管理する義務を負います。具体的な管理内容は多岐にわたりますが、主なものとしては以下の点が挙げられます。

  • 財産目録の作成: 後見開始後、速やかに本人の財産(預貯金、不動産、有価証券など)の状況を把握し、財産目録を作成して家庭裁判所に提出します。これは、後見が開始された時点の財産状況を明確にするための基礎資料となります。
  • 年間収支報告書の提出: 定期的に(通常は年に一度)、本人の収入と支出を記録した収支報告書を家庭裁判所に提出します。これにより、財産の増減や使途が明確にされます。
  • 日常生活費の管理: 本人の生活に必要な費用(食費、医療費、介護費用、住居費など)を計画的に支出し、記録します。
  • 重要な財産行為の管理: 不動産の売買、高額な投資、遺産分割協議への参加など、本人の財産に大きな影響を与える行為については、家庭裁判所の許可が必要となる場合があります。

2. 不正防止と透明性確保のための仕組み

成年後見制度は、後見人による不正を未然に防ぎ、財産管理の透明性を高めるための複数の仕組みを持っています。

⑴ 家庭裁判所による監督

成年後見制度の最大の特徴は、家庭裁判所による監督があることです。

  • 後見監督人の選任: 必要に応じて、家庭裁判所は後見監督人を選任することができます。後見監督人は、成年後見人の職務執行を監督し、家庭裁判所へ報告する役割を担います。これにより、第三者の視点から財産管理の適正性がチェックされます。特に親族が後見人になる場合、監督人が選任されるケースが多く見られます。
  • 定期的な報告義務: 成年後見人は、前述の財産目録や年間収支報告書を定期的に家庭裁判所に提出する義務があります。家庭裁判所はこれらの報告書を審査し、不適切な点があれば指導を行います。
  • 調査・指示: 家庭裁判所は、必要と判断した場合、成年後見人に対して財産管理に関する具体的な指示を出したり、報告を求めたり、職務執行状況を調査したりすることができます。

⑵ 任意後見制度における「任意後見監督人」

任意後見制度においても、本人の判断能力が低下し任意後見契約が発効する際には、必ず家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されます。任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約の内容に従って適切に職務を行っているかを監督し、家庭裁判所に定期的に報告します。これにより、任意後見人の独断専行を防ぎ、本人の意思を尊重した財産管理がなされるよう担保されます。

⑶ 専門家によるサポート

弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が成年後見人に就任した場合、その専門家団体(各士業会)も独自の倫理規定や研修制度、苦情処理の仕組みを持っており、職務の適正な執行をサポートし、不正を防止する役割を担っています。専門家は、財産管理の専門知識を持っているだけでなく、第三者として客観的な視点から職務を遂行するため、より透明性の高い管理が期待できます。

3. 財産管理に関する懸念がある場合の対応

もし、成年後見人による財産管理に不信な点や懸念がある場合は、以下の窓口に相談することができます。

  • 家庭裁判所: 成年後見に関する監督権を持つのは家庭裁判所です。疑義がある場合は、まずは管轄の家庭裁判所に相談してください。
  • 弁護士会・司法書士会: 成年後見人が弁護士や司法書士である場合、それぞれの士業団体に苦情申し立てを行うことができます。
  • 市町村の福祉担当窓口: 地域によっては、成年後見制度に関する相談窓口を設けている場合があります。

まとめ

成年後見制度における財産管理は、本人の財産を守るための重要な側面であり、家庭裁判所の監督、任意後見監督人の存在、そして専門家の関与といった多層的な仕組みによって、その透明性と不正防止が図られています。制度を正しく理解し、適切な専門家と連携することで、安心して利用できる制度であると言えるでしょう。